相続の業務を行っていると、たまに「生命保険金はどうなるの?」と尋ねられます。保険金は相続には入りません・・・ということは理解している方も多いと思いますが、実は、生命保険金が相続の対象になるかどうかについては、一連の最高裁判例によって基準が示されているようです。
【原則】 生命保険金は相続の対象とならないが、例外的に相続の対象となる場合がある 【理由】 生命保険金(死亡保険金)請求権は保険金受取人が自己の固有の権利として取得するのであって、保険契約者または被保険者から承継取得するものではない |
なるほど、保険金は被相続人の財産となっていないので、「遺産相続」という概念から外れるわけですね。しかし、「例外的に相続の対象となる」が気になります。
平成16年最高裁決定は、「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合」に、生命保険金(死亡保険金)請求権を特別受益に準じて持ち戻すべきと述べています
この「特段の事情」とは一体どのような場合に、持ち戻しの対象となる可能性があるのでしょうか。それは下記の3点です。
〇 生命保険金の金額が、遺産総額と比べてあまりにも高額である場合
〇 もともと被相続人とは疎遠だった人が、多額の生命保険金を受け取った場合 〇 経済的に困窮している相続人を差し置いて、裕福な相続人が多額の生命保険金を受け取った場合 など |
簡単に言うと、生命保険金(死亡保険金)がこれら例外の基準に該当する場合、受取人は、生命保険金(死亡保険金)を独り占めできず、生命保険金(死亡保険金)の額を遺産総額に加算して遺産分割をしなければならないようです。
ここまでくると判断がむつかしくなりますね。トラブルの発生が懸念される場合は弁護士案件となるような気がしますが、このような最高裁判決があることは理解しておきましょう。
さらに注意すべき点があります。
生命保険金(死亡保険金)の受取人が被相続人本人の場合には、生命保険金は相続の対象となります |
おおぉ!っと、これは筆者自身の生命保険が、このパターンでした。結構な率で受取人の欄に「本人」と記載しているのではないでしょうか。
この場合は、生命保険金請求権は、相続開始時点で被相続人が有する財産として、相続財産に含まれることとなるようです(民法896条)
以上の内容は、相続関係の事務を依頼され、分割協議書を作成する際に影響が出てくる可能性がありますので、留意したいところですね。
補足
相続時の相談のときによく出てくる「税金」について整理しました。贈与税となる場合に注意が必要ですね。
1 保険料を被相続人が負担していた場合は相続税が課税(相続税法3条1項1号)。
2 生命保険金に対する相続税の非課税限度額
生命保険金(死亡保険金)には、相続税の非課税限度額が設けられています。
非課税限度額=500万円×法定相続人の数
※「法定相続人の数」には、相続放棄をした人もカウント可
※法定相続人の中に養子がいる場合、実子がいれば1人まで、実子がいなければ2人まで、養子を「法定相続人の数」としてカウント可
3 保険料の負担者が被相続人以外の第三者の場合
保険料を被相続人以外の第三者が支払っている生命保険につき、被相続人の死亡によって生命保険金を受け取った場合には、贈与税が課税
4 生命保険金(死亡保険金)自体を相続人間で分ける場合
一部の相続人が受け取った生命保険金(死亡保険金)を、相続人間の公平を図るために、他の相続人に対して分配する場合は、贈与税が課税
うーん、難しいですね。このような事例がある場合は、税理士さんに相談しましょう
また、相続登記をしている場合の取り扱いも参考としてお知らせいたします
相続放棄をした受取人であっても、生命保険金(死亡保険金)を受け取ることができる |
これは、前に記述していますが、生命保険金(死亡保険金)は原則として受取人の固有財産となるからですね。※ 原則にご留意ください
最後になりますが、行政書士として原則的な考え方をシッカリ理解しておく必要があります。が、生命保険金に関して少しでも悩むパターンがある場合には、保険会社や弁護士又は税理士の先生方に相談することが大切ですね。
投稿:y-kanazawa